私たちの行動は、行動した後の相手の反応に影響を受けます。
行動された直後に好意的な反応を返すこ とでその行動の回数を増やすことを、行動分析学では「好子」(こうし)と呼びます。
好子とは反対に、行動の直後にネガティブな反応を返すことでその行動を減らすものを、行動分析学で「嫌子」(けんし)と呼びます。
チームの望ましい行動を増やす
好子の例
・大事な情報をメモしていた時に、 「メモするのは重要だよね」 とニッコリ笑う
・提案をしてくれた時に、 その内容に関わらず 「いいね!提案ありがとう」 と言う
・患者さんへの説明が 上手くいったときに、 「分かりやすかったよ」と褒める
望ましくない行動があった時は好子を発動させない
消極的な発言や波風を立てるような発言、誰かを非難するような発言をしてチームの士気や雰囲気を乱すスタッフがいることもあります。
そういった場合には好子をあえて消失させることで、そのような言動が弱まりやすくなります。
これを行動分析学では「強化」の反対で「弱化」と言います。
スタッフに厳しいことを伝える
嫌子の例
・大声で話しているスタッフが いたときに、 「しっ」と口に指を当てて叱る
・会議でずっとべらべらと話している 人に対して、 目を合わせない、下を向いて つまらなさそうにする
・仕事のミスにつながりそうなこと、倫理に反することは嫌子を使うことで抑制する。
嫌子のデメリット・危険性
スタッフに耐性が備わる
繰り返し与えられる嫌子に慣れてしまい、いずれ行動を制御できなくなります。
いつも叱ってばかりいる上司の説教は聞き流すようになります。
その結果、説教(嫌子)がエスカレートしてパワハラになる危険が生じます。
嫌子を与える人を避ける
良好な人間関係を育むことが難しくなり、スタッフ側も進んで教えてもらおうという気持ちになれなくなります。
スタッフ同士が結託して嫌子を与える人に対して攻撃的 な態度に出ることもあります。
全体の行動が抑制される
私たちは嫌子から逃げられない状況に置かれると活動性を失うとされています。
嫌子を与えられる行動をしなくなるだけでなく、新しい学習も阻害されます。
嫌子をつい使ってしまうシチュエーションとは?
例
いつも私が怒るので、怒られたくないためにBAD NEWSが報告されなくなった。
→何で出来ないんだという怒りをぶつけたかったのかも自分に余裕がなかった。
スタッフが自分勝手な行動 をしたので、そのことをきつめにフィードバックしたらその後距離感が生まれてしまった。
→自分が普段規律を大事にしているので、その価値観を踏みにじられたのが許せなかった。
スタッフがミスをした際、 事態の大きさを理解していなかったようなので強く言ったら、「辞めたい」 といいだされた
→事の重大さを理解させたかった
いつも何でも私に聞いてくるので、 しびれを切らして 「何でもかんでも聞いてこないで」と言っ たら全く何も聞いてこなくなった。
→時間的余裕も心理的余裕もなかっ たのでついカッとなってしまった。
フィードバックを使う
嫌子を使うことで、ミスを事前に防いだりというメリットもありますが、逆に行動の抑制などのデメリットもあるとお伝えしました。
じゃあこの場合はどうすればより良くなるのか?
答えは「フィードバック」を使うことです。
「フィードバック」とは、相手から感じたものを伝えるスキルです。
そのことにより、自分(相手)自身では見えていないことに意識が向き、その結果、「気づき」が生まれます。
相手に対するポジティブなフィードバックは励ましになります。
また、ネガティブなフィードバックであっても、信頼関係をベースに正直に伝えることで、より深いコミュニケーションを図ることができるようにもなるのです。
例
「あなたが心から楽しんでいることが伝わってきますよ。」
「僕には、君がまだベストを尽くしていないように感じるよ。君はもっとできるはずだと思っているよ。」
「君が部下のことを心から大切にしているのが、伝わってくるよ。」
「話を聴いていると、あまり自信がないように感じ取れるのだが、どうだろうか?」
「フィードバック」のポイントは、相手の話を聴いて、感じたことを感じたまま伝えることです。
また、相手が話していない感情や思いの部分を感じ取り、伝えることです。
人間は時として、口にしていることと、実際に思っている内容とが食い違うものなので、それを感じたら、正直にそれを伝えることも、「フィードバックする」ことです。
フィードバックすることで、厳しいことをニュートラルに伝えることができます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
行動心理学としての「好子」、「嫌子」、「フィードバック」を使い分けることで、より良いコミュニケーションとして確立していきます。
伝え方一つで、人のやる気、行動力は決定されます。
仕事においては、チームですることがほとんどです。
部下への伝え方、同僚、もしくは上司にうまく伝えることができると、気持ちよく仕事に取り組むことができます。
ぜひ今回の伝え方を実行してみてください。
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